オントロジー / ナレッジグラフ 入門

「うちの優良顧客」を、
AI は知らない。

生成 AI は日本語の一般的な意味を知っています。しかしあなたの会社での意味は知りません。 オントロジーは、その差を埋めるための仕組みです。

この資料説明するもの意味の設計図
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02問題

同じ言葉が、部門ごとに違う意味を持っている

「解約しそうな優良顧客を教えて」と AI に聞けば、答えは返ってきます。問題は、その答えが誰の定義の「優良顧客」なのか分からないことです。

営業部
年間取引額が上位 20%

売上への貢献で見る。今期の数字が基準。

カスタマーサポート
契約年数が 3 年以上

継続してくれているかで見る。金額は問わない。

経理部
入金遅延がゼロ

回収リスクで見る。取引額が小さくても優良。

どれも間違いではありません。ただ、AI にはどれを使うべきか分かりません。 人間なら聞き返しますが、AI は聞き返さず、もっともらしい答えを返します。
03定義

オントロジーとは、地図の凡例である

地図に線が引いてあっても、それが道路なのか川なのか県境なのかは、線を見ただけでは分かりません。分かるのは凡例があるからです。

会社のデータも同じです。「顧客」テーブルと「取引先」テーブルが別にあるとき、それが同じものなのか違うものなのかは、データだけを見ても分かりません。

オントロジーは、その凡例に当たります。中身は、言葉の定義(優良顧客とは何か)と、言葉どうしの関係(注文には必ず顧客がいる、店舗は地域に属する)を書いたものです。

人間向けの用語集と違うのは、機械がそのまま読んで使える形式で書く点だけです。

同じ線でも、凡例次第で意味が変わる
道路 — 車で通れる
— 橋がなければ渡れない
県境 — 通れるが管轄が変わる

データも同じです。顧客ID という列があるだけでは、 それが発注者なのか請求先なのか担当営業なのか分かりません。

04仕組み

表で持つのをやめて、文で持つ

普通のデータベースは、データを行と列の表で持ちます。ナレッジグラフは短い文で持ちます。文はいつも、主語・述語・目的語の 3 つ組です。

なぜ表より文がよいのか

表では、関係は「列」として押し込まれます。顧客ID という列名から、人間が意味を推測するしかありません。

文では、関係そのものに名前が付きます。だから後から関係を追加できます。そして何より、関係を次々に辿れます

文が増えると、同じ言葉が何度も現れます。この重なりを辿れるようにすると、点(もの)と線(関係)のつながった網になります。これがグラフです。

トリプル — ナレッジグラフの最小単位
注文 1024発注した顧客は山田太郎
注文 1024購入した店舗は渋谷店
渋谷店所在する地域は関東
優良顧客定義した部門は営業企画

「注文 1024」が 2 つの文に出てきます。この重なりが、点と線の網をつくります。

05対比

同じ質問を、表とグラフで比べる

グラフの価値がはっきり出るのは、いくつもの関係を辿らないと答えられない質問です。質問を選ぶと、グラフ上で辿る道筋が光ります。

製品・ロット・出荷・注文・顧客・店舗・地域・分類・承認記録のつながり
表で答える場合

グラフで答える場合

06価値

導入して何が変わるか

いずれも「AI が賢くなる」話ではなく、AI に渡す前提が整う話です。

AI が社内の言葉で答える

定義を一箇所に置き、すべての AI がそれを参照します。

これまで:担当者がプロンプトに定義を貼り、更新のたびに全アプリを直す

システムをまたいでつながる

CRM の「顧客」と請求系の「取引先」を同じものとして扱えます。データを 1 か所に集める必要はありません。

これまで:突合表を Excel で管理し、片方が変わると壊れる

答えの根拠が辿れる

どの定義の、どのバージョンに基づく答えかが記録に残ります。

これまで:AI の答えの根拠を、人が改めて調べ直す

作り直しに強い

W3C の国際標準で書くため、製品やクラウドを変えても定義は資産として残ります。

これまで:ツールを変えると、蓄積した定義を作り直す
07誤解

これは何ではないか

提案の前提を揃えるため、よくある誤解を先に書いておきます。

AI が賢くなる仕組みではない

モデルの性能は変わりません。変わるのは AI が参照する前提の正確さです。前提が曖昧なままモデルを大きくしても、答えは曖昧なままです。

今の DB を捨てる話ではない

既存システムはそのまま使います。オントロジーはその上に載る意味の層です。データを全部移す必要はありません。

一度作れば終わりではない

組織が変われば言葉も変わります。だからバージョン管理と承認の流れが要ります。作る仕組みより、更新し続ける仕組みが重要です。

全社を一度にやる必要はない

ひとつの業務領域から始めます。領域ごとに区切って持てるので小さく作って育てられます。全社の合意を待つ必要はありません。

08段取り

3 つの段階で進める

順番に意味があります。棚卸しをせずに定義を書くと、既存システムと合わない定義ができます。

1

棚卸しする

既存システムのテーブル定義、項目名、社内文書を集めます。「どんな言葉が、どこで、どう使われているか」を洗い出す段階です。AI で下書きを作り、作業量を圧縮できます。

2

定義して承認する

用語と関係の候補を作り、業務の専門家が承認します。ここは自動化しません。誰が承認したかが、後で答えの根拠になるからです。承認済みの定義だけが公開されます。

3

提供する

承認済みの定義を、AI エージェントと業務システムに提供します。AI 側には読み取り専用で渡すため、エージェントが定義やデータを書き換えることはありません。

09裏付け

技術部門から出る質問への回答

標準
W3C の国際標準(RDF / OWL / SPARQL)を使います。特定ベンダーの独自形式ではありません。
ロックイン
グラフの保管先は差し替え可能です。既に別のグラフ製品をお持ちなら、それを使えます。
構築
Azure 上で動くOSS の実装があり、コマンド 1 つで構築・完全削除できます。中身を検証できます。
可用性
グラフはいつでも作り直せる派生物として設計します。正本は通常のデータベースとストレージです。
安全性
AI への提供は読み取り専用。書き込み経路は業務システム側に限定します。
費用
評価用の最小構成なら月あたり数十ドル規模から始められます。使わないときは削除できます。
10用語

この資料に出てきた言葉

オントロジー
会社の言葉の定義と、言葉どうしの関係を、機械が読める形で書いたもの。地図の凡例に当たります。
ナレッジグラフ
オントロジーに従って実際のデータをつないだ網。点が「もの」、線が「関係」です。
トリプル
主語・述語・目的語の 3 つ組。ナレッジグラフの最小単位です。
SPARQL
グラフに質問するための言葉。表に対する SQL に相当します。スパークル と読みます。
MCP
AI エージェントが外部の道具やデータにつながるための共通の作法。これ経由で AI に定義を渡します。

非技術者向けの説明資料です。図中の製品・顧客・店舗はすべて架空の例です。 Azure、Microsoft、AWS、Amazon は各社の商標であり、本資料はこれらの企業と提携・承認関係にありません。